船板アート制作 no.2

忠海集学校

                             

                             

 

 

 

         

                  

        

 

広島県竹原市忠海二窓の交流施設「忠海集学校」の校庭から中庭に向かう通路壁面に制作していた「船板アート」が3月12日に完成しました。「忠海集学校」は閉校になった忠海東小学校をIT企業のリングローが「おかえり集学校プロジェクト」として復活させて、パソコンを普及しながら地域の交流施設として再活用しています。

IT関連のみならずワークショップやフリーマーケットなど地元ならではの楽しい集いが盛りだくさん、大人も子供も気軽に立ち寄れる憩いの場所です。

 

        

船板の古材を提供してくださった地元の歴史民俗研究家で世話人代表、新本 直登さんから繋いでいただき、施設のリニューアル改修事業の一環として「船板アート制作」させていただきました。もともとは広島出身の民俗学者だった私の兄、小川徹太郎が瀬戸内の漁師さんを研究するために通い続けた小さな 港町で、兄が亡くなってからも当時からお世話になっていた新本さんのご案内で、甥っ子たちと釣りをしたり島を

巡ったり、遊びに行かせていただいた親しみ深い場所です。潮風を感じながら壁面制作に励みました。

            

船板設置には、新本さんを始め、地元の建築士山崎さん、甥っ子の小川考二郎くん、集学校の皆さん、原田建築 工藝の原田雄次さん、原田さん主催のワークショップに参加された学生さん達にお手伝いいただきました。

みなさん大変お世話になりありがとうございました!

 

主催:リングロー株式会社 原田雄次建築工藝

忠海集学校 https://tadanoumi.shugakko.jp

 

 

 

         

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

瀬戸内の海の中のイメージを、ターコイズブルー、コバルトブルーなどの絵具で昨年末にペインティングしておいた 壁面に、魚が泳いでいるように見立てて船板を設置しました。約3m x 7mの大きな壁面には、気持ちよくのびのびと 描き進めることができました。けれどそこにたどり着くまで、たくさんのドローイングや、10分の一の設計図、縮小漆喰壁面でのマケットなどなど、試行錯誤して出来上がったたまものだと言えます。

      

船板の中に内在している記憶…かつては瀬戸内海を行ったり来たりしたであろう。ある時は穏やかな波間を、ある時は荒波の中を往復したであろう “船とシオの記憶” を想像することが私の制作を駆り立てて仕上げに向かわせました。

「潮の記憶」というタイトルは、仕上げの際に居合わせた甥っ子の考二郎くん、中国新聞記者さんや、皆の意見が一致して付けられました。兄の遺稿集『越境と抵抗』(新評論)の中にも、漁師さんは海の上では、「シオの流れを読みながら船を移動させて漁をする。」と書かれており、シオ・潮と人は特別な関係で繋がれているようです。

  

 

 

 

 

 

 

 

長い年月を経て、風化してできた趣きのある古材のアウトラインをそのまま生かすため、崩れそうな船板の木目に透明のメディウムや絵具、胡粉などを何層も塗り重ね固めて仕上げました。艶のあるメディウムとマットなメディウムを使い分けて表面を仕上げているところも特徴です。    

                                                              

家の壁材として使われた後、しばらく倉庫に眠っていた船板を新本さんからはじめて見せていただいた時は、まっくろくろすけのもろい板でこの古材から本当に制作できるのだろうか、、途中で崩壊するのではないだろうかと始終心配したけれど、ジグソー(電動ノコ)での切断面を見ると、中は下記の写真のように強くて丈夫な木材だとわかりました。後から、表面が黒いのは、焼いて炭化させて防腐効果を出す、和船の強度を高める技術だとわかり、先人が考えた知恵により何十年もたった今も丈夫な板であることに驚かされました。

 

 

 

 

 

 

電動ノコで切断した船板の断面:表面の炭化の防腐効果により木の内側は硬くて丈夫な状態に保たれている。

 

 

 

 

 

        

 

体育館の倉庫に保管していた船板にはじめてお目にかかった際は、埃をかぶり煤けてまっくろくろすけで眠っているようでした。しかしどこかに惹かれる魅力的な何かを感じ、新本さんにお願いして提供していただきました。その魅力とはいったいなんだったのでしょうか?今も不思議です。船として使われ海を渡り、壁材として家を守り、そこに刻まれた風格からなのか、それとも炭化するまで表面を焼かれてできた墨の風合いからなのか、、、。これらを洗い、乾かし、メディウムや絵具を塗り魚のようなレリーフに仕立てたました。

 

 

 

 

 

 

 

船板を洗って晴天下に乾かす。

 

 

 

 

 

          

 

メディウムや絵具、通常私が絵を描くときに使う顔料なども使って色彩を施しました。

               

 

 

             

         

           

 

                                         撮影:小川考二郎

 

          

                             

 

 

 

     

 

 

校庭から光が差し込むと、向かいに設置している竹細工の影が壁面に投影し陰影を増します。

地域の皆さんに立ち寄って見ていただいた時に、それぞれの心の中の海のイメージを膨らませられるような想像力を掻き立てる「船板アート」になることを切に願ってます!

 

                             

 

 

 

 

          

 

 中国新聞をはじめ、共同通信より、日経新聞、中部経済新聞、神戸新聞、毎日新聞に船板アート完成の記事を 掲載いただきました。さらに 中国新聞記者 渡部公揮さんにデジタル版(youtube)も制作していただきました。

       

 

 

 

 「潮の記憶」テーマの船板アートが完成 竹原市の交流施設・忠海集学校/制作:中国新聞社


 

 

 

 

 忠海集学校・忠海ワークショップ /制作:原田雄次建築工藝

 

 

 

 

 ◼船板アート制作 no.1 忠海集学校   

  

                                     

    

 

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